本シリーズでは、群馬県桐生市にあるジャカード織物を制作している機屋・須裁株式会社が、ジャカード織生地が出来るまでの工程をご紹介しています。
過去の記事も是非こちらからご覧ください:
vol.1 ジャカード織とは? ~200年と100年の歴史~
皆さん、こんにちは。
今回は、ジャカード織生地の製作工程で、「工程④:原料(糸)の仕入れ」のあとに行われる、「工程⑤:染色(せんしょく)」についてご紹介していきます。
【製作の全工程(先染めの場合)】
工程① 全体構想
工程② 織物の設計図(組織データ)づくり
工程③ 紋紙(もんがみ)の作成
※デジタル織機を使う場合は無し
工程④ 原料(糸)の仕入れ
工程⑤ 染色(せんしょく)
※「後染め」の場合は「製織」後に実施
工程⑥ 整経(せいけい):経糸(たていと)の準備
工程⑦ 製織(せいしょく):織り
工程⑧ 整理(せいり):生地の風合いの仕上げ
工程⑨ 加工
※生地によっては無し
工程⑩ 梱包・出荷
「先染め」の生地の場合は、前回の「工程④:原料(糸)の仕入れ」で計画した生地に合う糸の準備が整うと、次に糸の染色の工程に入ります。
染色の工程もまた、「染め屋さん」と呼ばれる専門の職人さんがいて、その工場はまるで化学実験室のような風景です。
染め屋さんではビーカーを使用して、色確認のためにいくつかの色見本を作っていきます。染料の配合は、基本的には染め屋さんの技量にお任せしますが、機屋から色のニュアンスを伝えて対応いただく場合もあります。ただ、通常は勘だけでは難しいので、配合量を少しずつ変えつつ、それを記録しながら、別々のビーカーで色見本を作っていきます。
ところが、データを取っていればいつも同じ色が出るかというとそうではなく、夏と冬の水温の違い、湿度の違い、後染めの場合は染める生地の大きさの違い等により、色合いが変わってしまいます。また糸の種類によっても、例えばポリエステルなどは120-130℃、ナイロンなら100℃、キュプラ・レーヨンは80-90℃など、染めるのに適切な温度が決まっています。
これらの温度を上げ過ぎてしまうと、糸自体が壊れてしまうこともあります。糸は常に呼吸をし、生きているので、その時々のコンディションによって染料の浸透度合いも変わってきます。
水温と気温と湿度と素材。その組み合わせを少しずつ変えながら、最適な数値をたたき出して、そこにさらに職人の長年の経験と勘(さじ加減)による微調整を加えていきます。
このように「化学」+「職人の勘」で、ようやく織物の色は作られていきます。
次回は、「工程⑤:整経(せいけい)」、「工程⑥:整理(せいり)」の工程について詳しくご紹介していきます。
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